材木屋がデジタル展示場を作ったワケ。2

4代目材木女子

①-2 地元の工務店=地元のウマい店!?

材木屋の仕事をしながら思うのは、地元の工務店というのは正に「地元のウマい店」と同じだということ。対してハウスメーカーやパワービルダーなどはちょっと良いファミレス的な感じがする。その心は…

まず、ファミレスはラーメンでも寿司でもステーキでも頼めてセントラルキッチンの調理技術により一定の味の担保もされているが、あらかじめ決まっているメニューから選ばなければならず、「本日入荷したばかりのマグロ」などこだわりメニューは頼めない。また一定ランクの価格もする。ハウスメーカーも同じように、広域エリアで同じ建築商品展開をしており、和風でも洋風でもバリ風でも、何でも来いの商品ラインナップがあったりして、一定の質の担保もされているが、「ここの部分だけどうしてもこの素材を使いたい!」などの選択肢にない細かな要望に柔軟に対応できるところは多くない。

一方、地元工務店は、地元料理店と同じく●●屋のように、つまり断熱や省エネが得意な工務店、デザインが得意な工務店、といった専門分野が実はあったりする。地元の寿司屋でステーキが頼めないように、和風建築の得意な工務店にヨーロッパ風住宅を頼むのはナンセンス。ただ、地元の寿司屋では大将こだわりの抜群にウマい寿司が食べられるように、地元工務店では得意分野においては細かな要望を叶えてくれるなどハウスメーカーを超えるパフォーマンスが得られる事例が多い。

自分にぴったりあった工務店を見つける事は、地元のウマい店を知った時のように満足度が高いもの。要は、選択肢の存在を知ると知らないでは、その後の選択行動が大いに異なるということ。昔の私を含め、ハウスメーカー等のマス広告が目につきがちなユーザーにとって、家づくりの選択肢として「地元工務店の存在自体をあまり知られてなくてもったいない!」「自分にピッタリの工務店を探してほしい」と感じたことから、紹介したいと思うようになったのです。

② よく分からないものを100万円で買いますか?

「MOKU TOWN」のもうひとつの特徴は「住宅の構造となる木の生産ストーリーを感じられる」こと。実は企画段階において「住宅の見えない部分の木 推し」をしても、誰が興味あるんだ!とたくさんのご意見を頂きました。確かに。でも、それをあえてやりたかった。

家を買う人は、一般的な大きさの家でも実は100万円~200万ほどかけて構造木材を買っている。国産材、外国材、様々な樹種、様々なサイズ、様々な等級、強度、価格…とバリエーションのある構造材の中から、何かを選択して購入しているのだ。なのに、どこのどんな性能の木を買ったと答えられる人はどのくらいいるだろうか?「100万円以上かけているはずなのに、選んでない!」ことが、家づくりでは頻繁に起こっている。ここが建築におけるユーザーから見たブラックボックス。建築の現場では、材木屋と工務店で施主の予算の範囲内や建物の雰囲気に合うように勝手に?!または、ほぼお任せ状態で?!木材を選択して行ってしまう仕事なのだ。確かに、誰でも何でも樹種が選べる訳ではなく建築物の間取りの条件や構造の組み方によって、選択肢の範囲が限られることもあるから、知識のあるプロの間で一番よかろうと思うものを選択しているのは間違いないが。

ただ、くどいようだが、選択肢の存在を知ると知らないでは、その後の選択行動や満足度が変わってくる場合があるよという事だ。「ヒノキ造りの家」って憧れる響きだと言われることもあるが、実際、ローン金額に換算すると月額千円程度しか変わらない場合もあったりして、案外選択肢の存在を知っていれば、選びたい幅が増える事もあるのだ。

③ 例えば「ブランドいちご」のように。

「MOKU TOWN」では、さらに建築の作り手、木材の作り手などの「動画」に力を入れている。経済合理性が優先されがちな現代社会でも、やっぱり私の心を感動させるものは「ストーリー」だったりする。

家づくりの裏側のストーリーに日々触れている私にとって、実は一番ユーザーの方に見せたいものは「作っている人の思い」なのだ。例えば、「ブランドいちご」とかだって、作り手の顔や作る様子が見えていると、少々高くても買いたくなり、食べるとそれなりの満足感を持つものだ。業界の裏側から見ると、機械化された海外の大量生産木材と、手仕事も入った(入らざるを得ない日本の森の状況もあるのだが…)国産の木材生産の違いも、いちごと同じ。性能どうこうを比べるのではない、何かエモーショナルな価値がそこに必ずある。家づくりは「大量生産ではない、ものすごく多くの人の手が関わる仕事」なのだ。どうせ一生に一度の家づくりなら、作り手の思いを感じるものづくりを体感してほしいと思ったんです。

というわけで、2021年5月、一部緊急事態宣言のコロナ禍かつ木材業界ウッドショックというかつてない苦境の背景ながらも、岐阜の材木屋がエリアのモノづくりメンバーをみんな誘い、みんなで頑張ろうぜ!と50社以上が手を携え、満を持して「デジタル展示場 MOKU TOWN」をオープンします。岐阜県の公式キャラクター「ミナモ」も全面的に応援してくれているので、一度チラッと覗いてもらえたら幸いです。

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